こんにちは。お久しぶりです。
今は二十四節気「小雪」の末候「橘始黄」
(橘の実が黄色く色づきはじめる)ころ
シロのPotage(畑)に蜜柑ができました。
2018年に苗木を植えて、初めて結実した蜜柑。
私の膝ほどの小さな木に2個、黄色くなりました。
蜜柑というと、ある日の父のごわごわした手を思い出します。
今日はそのおはなし。
六歳の私は父に連れられ青果市場へ行った。そのころ父が営んでいた青果店の仕入れをするためだ。市場には普段見られない物が多くあった。たとえば、大人が「パタパタ」と呼んでいたその車は前方に円筒型の動力部があり、上部にハンドルがついている。後部に積まれた荷物を運ぶのだが、しゃがれた大きな声をあげ、細い通路を巧みに行く様は、戦闘用馬車チャリオットに乗る古代ローマの兵士のようだった。
私はその日も、市場の兵士たちを眺めていた。師走の市場の熱気は凄まじい。誰もかれも喧嘩をしているみたいに見えた。椅子に座って、コンクリートの床まで届かない自分の足をブラブラさせていたときだった。一人の兵士が「鈴ちゃんは何キロになった?」と言うが早いか、私を秤に乗せて「18キロか小っせぇなぁ」。
すると、三三五五集まった兵士が、代わる代わる私を持ち上げ始めた。私の両脇を持ち、上げ下げしながら「むずかしい」とか「ちょうどいい」とか言っている。どうやら、歳末セールの話のようだった。私とピッタリの重さの蜜柑を箱に詰められた客に、その蜜柑をプレゼントするイベント。
そこは、市場内にある父の友人が営む乾物問屋。父が仕入れをする間、私は店先の椅子に座って待っていなければならなかった。なぜだか、その日に限って父はなかなか戻ってこない。兵士たちと乾物問屋の主人との間で私をレンタルする話は成立していく。悪戯か本気か検討がつかず、怖ろしかった。
父がひょこひょこと戻ってきた時、はじめて、私は自ら父の手を握った。「なんやお前どおしたんや」と父は驚いていた。いつも父に反発ばかりしていたから無理はない。
あの時私は泣かなかったのに、今朝はふたつ並んだ蜜柑に泣けてきた。
そして、初めて収穫した我が家の蜜柑は少々酸っぱかったです。